二神建築事務所 スタッフBLOG 姫路を拠点に邸宅からデザイナーズマンション、HACCP仕様の食品工場、病院、介護施設、庁舎の建築設計

くすのき愛児園 竣工2022-04-25 18:02:57

神戸市中央区で既存建物をリノベーションした保育所「くすのき愛児園」が竣工しました。

この事業は国有財産である既存の官舎を利用した神戸市の公募案件で、30弱の事業者の中から本事業が採択されました。

採択されたポイントとしては、運営される社会法人様の長年にわたる実績の他、改修プランとして園舎利用する建物内はもちろんのこと、園庭を含めた屋外利用についても魅力ある提案がされたことでした。

 

リノベーションするにあたって一番に考えたのは明るく風通しのよい空間にすることです。

当たり前のことなのですが、既存部に対する改修の制限があったため、サッシ含めた外観はなるべく既存のままとする必要がありました。

もともと官舎(住宅)として使用していたので南面には大きな窓がありましたが、北側は水回りなど裏方の部屋だったため窓はそれほど大きくなく、また間取りも中廊下型で非常に暗くてどんよりした感じでした。

改修後は廊下に面した建具を採光を考慮した形状とし、建具配置も風通しが良くなるように変更しました。

園庭として利用する場所は元は庭園と駐車スペースとして使用されており、広さとしては申し分ありませんでした。

しかしそのまま使用するには、大小多くの庭石や硬くてところどころ割れているタイル舗装など障害となるものが多い状態でした。

敷地周囲のブロック塀を調査したところ、現行基準に適していなかったため、高さを下げて一部をフェンスに改修することで地域への圧迫感を抑えました。

適度に風や視線が通る形状のフェンスは、敷地内の植栽の緑や保育園のにぎわう様子を程よく見ることができますので、付近を通学・通勤で通られる方々にも心地よさを与えられるようにしました。

増築できないという条件がありましたが、なるべく広く使えるようにしたいという想いから、保育室は可動間仕切りで使い方に応じて部屋の大きさを変化させることができるようにしました。

保育室以外の諸室も様々な用途を兼ねるスペースとすることで、保育や職員のニーズに応え、新たな価値を生めるようにしています。

中でも、廊下の一部に設けたフリースペースは外部のウッドデッキと一体利用することで平面上の面積を広くできますし、屋根が大きくかかっているので雨天や夏の炎天下でも自由に出入りすることができます。

他には、法人様が絵本を多く所有されていましたので、こどもたちがすぐに手に取れるよう、手すりを兼ねた絵本の面だし展示スペースを設けています。

季節行事やこどもの成長に合わせた絵本を展示することで、自然と本を読むことが好きになってくれると思います。

 

設計当初は「もう少し面積が広かったら」という気持ちもありましたが、様々な工夫を取り入れ・実践できたことで、リノベーション案件として非常に多くの良い経験ができました。

建設コストが上昇している昨今、今回のように既存ストックを利用したリノベーション案件も増えていくと思います。

面積や法規など制約は多いかもしれませんが、工夫次第で他にはない空間づくりが可能です。

これから既存ストックを活用した施設の開業を考えておられる事業者様や本案件のように公募事業をご検討の方のお力になれるよう、今まで以上に日々励んでいきます。

 

株式会社 二神建築事務所    担当:久保田
http://www.futagami-sekkei.com/